今回は遺伝学を学びたいけれど、何から学べばよいかわからない…という方にオススメの入門書を紹介します。
遺伝学は生物学だけでなく、医学や統計学、さらには生命科学系のビジネスにも活かすことができる汎用性の高い学問です。
とはいえバイオ・DNAといった専門用語が多く、本を選ぶのにも迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。
そこで遺伝学を高校生の頃からコツコツと学んできた私が中高校生、様々な専攻を学んでいる大学生、そして遺伝学の知識を仕事で生かした社会人の方までそれぞれにピッタリな1冊をわかりやすく紹介します。
ぜひ今回紹介する本の中からお気に入りの1冊を見つけてくださいね。
遺伝学初心者向け入門書の選び方
遺伝学初心者におすすめの入門書の選び方は主に3つあります。
- 理解度に合わせた本を選ぶ
- 遺伝学を学ぶ目的から選ぶ
- イラストや図が豊富な本を選ぶ
理解度に合わせた本を選びましょう
初心者のなかでも高校生の頃に生物学を学んだことがある方から、興味はあるもののこれまで学ぶ機会がなかった方までさまざまでしょう。
また遺伝学は情報が更新されやすい学問なので
- 30年前に生物学を学んでいた方と、
- 数年前に学んだばかりの方
では知識の質が変わってきます。
ここで自分にあったレベルの本を見つけるためのポイントを書いておきます。
シンプルな遺伝の仕組みが表現型(目に見える形質)に表れる例として、ABO血液型が挙げられます。
ABO血液型がどのように決定されるのか、A型とA型の両親からO型の子供が生まれることがあるのはなぜか、ということが本やインターネットを見てぼんやりと理解できるようであれば、少し難しい本にも手を出してみて大丈夫です。
逆にどうやって血液型が決まるのか説明を読んでもわからないな…という場合は高校生向けの生物の教科書や参考書から手にとってみると良いでしょう。
最近の教科書は図も多くわかりやすいため、復習がてら一度手にとってみるのもオススメです。
遺伝学を学ぶ目的から選びましょう
冒頭にも書いたとおり、遺伝学を学ぶことは生物学だけでなく、医学やバイオビジネスの知見にも良い影響を与えます。
遺伝学は生物学的、機能的な仕組みを学ぼうとすると非常に奥深く、正直難しいです。
なので自分の興味のある分野に関連する入門書から手に取ってみるのがオススメ。
遺伝学というと理系の学問のイメージがあるかと思いますが、遺伝学を通して生命倫理や代理出産といった社会的な問題を違う角度から見てみることも面白いかもしれません。
統計学、ビジネスなどの分野で遺伝学の知識を活かしたい場合は、生物学的な知識はほとんど必要ないため、ピンポイントで学びたい分野の入門書を買うことをおすすめします。
例えば、遺伝統計学やバイオ製剤などの知識を得たい場合は、生物学の本を買ってしまうと非常に遠回りしてしまい、効率が悪いです。
生物学としての遺伝学を学びたい人は、生物学の本で一度遺伝の仕組みを機能的な側面も含めて理解しておくことが大切です。
遺伝子発現の調節レベルまでしっかりと理解しておくことで、自分の中の理解度がまるで変わってくるのでそれを目標にしてもよいかもしれませんね。
イラストや図が豊富な本を選びましょう
遺伝学を学ぶ難しさとして、遺伝子やタンパク質は肉眼で見ることができないため、イメージしづらいということが挙げられます。
また遺伝学を学ぶ上でよく使われるのが家系図です。
家系図は図で見ればわかりやすいですが、文章で書かれてしまっては理解することが難しいですよね。
初めに理解する段階で、自分の中で図のイメージが浮かぶようになるとその後の学びがとてもスムーズになります。
実は生物を選択した大学受験生のなかで、最も難しいとされている分野が遺伝子の分野です。ですが、図を書きながら考えることができるようになれば突然点数が取れるようにもなることもあります。
これから遺伝学を学ぶ皆さんも、図の大切さを意識しながら本を選んでみてください。
遺伝学初心者におすすめの入門書5選
1位 図解 遺伝子の不思議と仕組み入門
この本はまさに「遺伝学に興味があるけれど、なんだか難しそうだなあ…」という人にぴったりの1冊です。
- 「〇〇は遺伝するのか?」
- 「〇〇なのは遺伝子のせい?」
といったトピックがたくさん並んでいて、読んでいて飽きることがありません。
またページごとにトピックが変わっており、イラストも豊富なため、雑学のような感覚で遺伝学について学ぶことができます。
この本のたくさんのトピックの中から、自分が興味を持ったことについて掘り下げていくのがおすすめです。
表紙に書かれているとおり「遺伝子から「自分」を知る!」ことができる、楽しい1冊となっています。
子供から大人まで全ての年代の人の好奇心をかき立ててくれることでしょう。
2位 休み時間の分子生物学
この本は分子生物学の初学者におすすめの入門書です。
分子レベルの生命科学についてタンパク質、核酸など細かく分類され、とても丁寧に説明されています。
また本の後半では近年研究で使われることの多い遺伝子組換えについても触れられており、まさに遺伝学初心者が初めに読むべき1冊と言えるでしょう。
休み時間シリーズは1テーマ10分で読めるというコンセプトで、分子生物学だけでなく、多数のシリーズが販売されています。
この「休み時間の分子生物学」を読んで楽しいと感じた方は、他の休み時間シリーズを読んでみるのもアリですね。
3位 キャンベル生物学
言わずと知れた大学の教科書の定番です。
遺伝学だけでなく、生物学全般の教科書としても活用できるので幅広い知識を得たい方にオススメです。
初めから分子生物学(DNAや塩基レベルのスケール)や、いわゆるメンデル遺伝学に限定して学ぶよりも、様々な段階で「遺伝」という仕組みが生物に影響を与えているということを理解するのに最適でしょう。
学校の生物の授業じゃ物足りない!という中高生にもぜひ手にとってほしい一冊です。
ちなみに原文は英語の教科書なので、もし英語が堪能であれば単語を日本語と英語で覚える手間が省けるので英語版を購入することもオススメします。
ただ海外の書籍ということもあり、値段が高いのがデメリットです。
なので、お金をかけても良いから本気で勉強したいという方は買ってみるのもアリですね。
4位 一目でわかる臨床遺伝学
医学に関心がある人はこの本を是非手にとってほしい1冊です。
なぜならこの本は実例や家系図が多く、遺伝学を身近にイメージしやすくなっているからです。
生物学的な遺伝子の役割だけでなく、症例学習まで掲載されているため、臨床に最も活かせる入門書と言えるでしょう。
そのうえ、用語集や略語の解説もあり、とっつきにくい印象のある遺伝学を自分の中で活かせる知識として身につけることができます。
またたくさんの見やすい図が描かれているので、
- 生物学を学びたい人が医学に踏み込む時にも
- 医学を学びたい人が生物学の知識を得るのにも
ぴったりの一冊だと思います。
5位 ゼロから実践する遺伝統計学セミナー〜疾患とゲノムを結びつける
遺伝統計学?と思われる方も多いと思いますが、最近話題になっているバイオインフォマティクスの仲間です。
医学と生物学の中間のような学問で、ざっくりいうと個人のゲノム情報と個人の持つ遺伝形質にどのような関連があるのかを統計学を使って調べます。
補足
ゲノム情報→DNAの並んでいる配列のことでATCGの4つの文字から成る暗号のようなもの
遺伝形質→身長、体重などの特徴のこと
この本は遺伝統計学の入門書として最適です。
- 本の前半で遺伝統計学に必要最低限の遺伝学への知識について説明が書かれており、
- 後半では実際に活用するプログラミングについての説明が書かれています。
私はプログラミングについての知識がなかったのですが、この本を通して少しずつ勉強を進めることができています。
遺伝統計学はこれから非常に伸びてくることが予想される分野なので、勉強しておいて損はありません。
- プログラミングはできるけど遺伝学については何もわからない
- 生物学の知識はあるけどプログラミングは苦手
という方も興味があれば手に取ってみると意外と使える知識が得られるかも知れませんね。
知識は無駄にならない
今回は遺伝学初学者にオススメの入門書・教科書ランキング5選を紹介させていただきました。
今勉強していること、これから勉強することは決して無駄になりません。
とっつきづらい分野ですが今回紹介した本を読んで少しでも人生の役に立てていただければ幸いです。